後半戦行ってみよう!(いかりや風味)
そういえば上半期編に『レスラー』を挙げなかったのですが、正直あの作品は非常に多くの方が観ている印象があったので、てっきりメジャーでロードショーやったもんだと勘違いしてました。あれ都内ではシネマライズ1館だったねそういえば。(※訂正。シャンテシネやシネリーブル池袋でもやってました。)というわけで『レスラー』は問答無用にオススメです。
とんでもなく非日常なシチュエーションの中で描かれる、何も起こらない日常。めちゃくちゃ旨そうな食事の数々。最初は丁寧な“料理”から始まり、徐々に“飯”になっていく、微妙な日常の移り変わり。何も起こらない話が結構好きな自分にとって、久々に幸せな気分になる「何も起こらない映画」でした。ほぼ誰一人イヤな思いをしない映画として、万人にオススメできる作品です。
南極から日本に帰ってきてからの日常もほんのり描かれる点も、丁寧で誠実な話だなあと思えるポイントです。
ホラーとサスペンスの境界上にある、実に巧みな映画。ずっと流れている違和感が最後の最後でドカンと弾ける、脚本賞級の展開が見事です。こういうのはあまり言を尽くすと単なるネタバレになってしまいかねないのが困り物。
つまらないとかそういうことではないのですが、あくまで個人的には、中盤あたりを見ているのが精神的な拷問のようであったのが難点といえば難点でしょうか。子供の邪心というのが個人的に大変苦手な逆ツボであることが思い知らされました。最後まで見れば、とりあえず納得いくことはいくのですが。
それを差し引いても、この映画の見事な展開には一見の価値があるのではないかと思います。
(↑はノベライズ文庫)
天才ポン・ジュノの強烈な一発。オールタイムベストに挙げられてもおかしくないほどの傑作サスペンス映画です。映画というメディアの現代的な形は、全てポン・ジュノの手の内にあるのではないかとすら思えるほどの出来です。
何しろウマすぎる構成でグイグイ引っ張られるのですが、真実があらかた見えた後でなおも続く物語の力は圧倒的の一言。終わらないことが嬉しくもあるのですが、「え、俺まだこんな気持ちを味わい続けるの!?」という戸惑いすらも感じさせられます。そして最後の最後に来る、歴史に残る完璧なラストシーンは必見です。
この映画から受ける衝撃は、他の何者にも例えがたい、あまりにもオリジナルな感情でした。これを自分の中にあるものとして受け止められるのは、やはり“母”だけなのかもしれません。母とはこれほどまでの狂気を内に秘めるものなのかなあと思うと、深い愛情を感じるやらゾッとするやら。
(↑はサウンドトラックCD)
いまや口コミで最も熱いとも言えるアニメ作品です。公開当初、新宿ピカデリーで上映していたときはまだあまり話題にも登っておらず、午前中のみの日が多かったせいか、ガラガラと言わざるを得ない状況でした。自分が観たときも客数せいぜい10人、観客はアニメ関係者か編集者かライターをはじめとするオタク界のベテラン格しかいないという異様な状況だったのですが、そうした人達の地道な布教活動の結果、ラピュタ阿佐ヶ谷での再上映レイトショーではパンパンのフルハウスになるほどの話題作になりました。
この映画は、ファンタジーに走らなかった『となりのトトロ』であり、宮崎駿が描いた「疑うことのない未来への視線」とともに、氏が描かなかった「子供にとっての、社会の理不尽さ」の双方を正面から捉えた映画なのではないかと思います。物語全体を徹底した子供からの目線で描くことで、そうした世界が浮き彫りにされている、稀有な作品なのです。大人が失って久しく、その感覚すら忘れてしまっているはずの世界をアニメーションの形で焼き付けた片渕監督は、間違いなく現代のアニメ界のトップランナーの一人であるはずです。
昔は良かったバナシでもなく、文部省推薦ライクなお為ごかしでもない。技術自慢で物語後回しの映画でもない。本年の俺デミー賞アニメ部門の大賞作品です。
(↑は輸入盤DVD)
今年のアカデミー賞は『おくりびと』の外国語映画賞受賞に湧きましたが、本来受賞すべき作品はこの『戦場でワルツを』だったことは衆目の一致するところです。何しろ『おくりびと』主演のモックン自身がそう思っているくらいですから。授賞式での滝田洋二郎監督のハシャギっぷりとは対照的だったモックンの引きっぷりがそれを如実に表していました。
受賞できなかった理由は、もちろん本作がパレスチナ問題に正面から切り込み、イスラエル軍によるサブラ・シャティーラの虐殺をテーマに取ったことにあります。本質的にユダヤ人の互助会であるハリウッドが、この映画に賞をあげるわけにはいかなかったのでしょう。(それでもノミネートされたのは、この映画の図抜けた質の証明かもしれません。)
この映画は、ひとつの映像のインパクトを最大に高めるために、その他すべてのシーンを作りこんでいる、珍しい作りの映画です。アニメという手法を取っていることも、一見平板なタッチの描き方をしていることも、すべて非常に緻密な狙いのもとにあります。テーマを描くために、こういうアプローチのしかたもあるのか、と唸らされる映画でした。
まだ公開中だと思いますので、よろしければ劇場へ。