たまにはここも更新しましょうね。
ちょっと騒ぎも落ち着いてきたので、フジテレビと韓国コンテンツの話を、あまり世間で触れられていない角度から取り上げてみたいと思います。
フジテレビが韓国コンテンツを使うのは、近年に始まった話ではありません。80年代後半には既に『オールナイトフジ』のサブ司会に韓国タレントを入れたり、深夜番組枠のJOCX-TV2で韓国をガイドする30分番組『SEOUL SOUL』を放送したりしていました。これはなんと、まだ韓国では日本コンテンツが禁止されていた頃の話です。つまり文化的にはまだ鎖国していた相手に対して、積極的に文化交流(というか利用)をしていたのだから、かなり実験的な試みだったのではないでしょうか。
ちなみにこの両方に出ていたのが、イ・ヘスクさん(当時の表記で言うと李恵淑、読みはイ・ヘースク)。最近ではドラマに多数出演するバリバリの女優さんになっています。映画『国家代表!?』に出たりもしていました。
ただ、80年代後半のフジテレビが実験的に放送していたのは、韓国コンテンツだけではありません。先述『SEOUL SOUL』(87年)と同じ深夜枠JOCX-TV2では、NYを取り上げた『NY者』(88年)、アジア全般の『千夜アジア物語』(90年)『アジアバグーズ』(91年)などの番組がありました。これらの番組は、その多くが現地の言葉で制作され、日本語は全編字幕という、今から見たら大変な冒険をしたスタイルで放送されていました。
もうひとつちなみにバナシをすると、先に挙げたオールナイトフジでも、イ・ヘスクさんの他に、香港の女優であるアニタ・ムイさんがサブ司会を務めていた時期がありました。ジャッキー・チェンやチャウ・シンチーの相方である大女優アニタがオールナイトフジに出ていたというのはかなりギャップがあるのですが、この辺はプロモーターの思惑などもあったのでしょう。
さておき、つまりフジテレビは、最も勢いがあった時期に、深夜番組で各国のコンテンツを実験し、その中で最も大きく芽吹いたのが韓国コンテンツだったわけです。20年越しでまいてきた種が、ここにきてようやく収穫できるようになった、とも言えます。
そんな視点から見れば、ビジネスとしては、いま収穫したいのは理解もできようというものです。これだけ先行投資してきて収穫の段になったらダメ、というのはちと可哀想な気もしたりします。
ただこれが音楽出版に絡むメディア・コングロマリットの話になると、ちょっと風向きが変わるんですよね。そもそも放送メディアに放送外収益の道を許しまくる日本の法律的欠陥の話になるので、これについてはまた別の、かつ大きな問題です。ビジネスのひと言で許していいのか、という話。
今回の騒ぎはいろいろなレイヤーの問題をごちゃまぜにしている意見が多くみられるので、問題は切り分けて考えるべきですね。